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ちょっとまじめに校正の話

 中学校で使用される教科書134点のうち、65点計200箇所以上で誤りがあることが文科省の調査でわかったというニュースがありました。教科書の校正がどのような形で行われているかは、僕は知りません。でも、ちょっぴり不思議な気がしました。なんで、わざわざ文科省が調査をしなければならないのか。これって、教科書を出版する版元が責任を持って行えばいいことです。また、検定を行っている段階で校正はしないのか、という疑問も起こりました。余計な税金使ってない?、そんな気がしたのです。でも、制度やワークフロー、あるいは責任の所在がはっきりとはわからないので、これ以上誰が悪いなどと書くのは止めておきます。
 
 根が編集者ですから、校正はまさに仕事の一部です。少なくとも出版物であるならば、校正が行われずにこの世に出てくるものなどひとつもありません。また、誤字や脱字を正すだけが校正作業と思っている人は意外と多いのですが、目に触れる部分すべてに対して行うのが校正です。広告では制作側が校正するのはもちろん、クライアントのチェックが入ります。クライアントのチェックが入ったからといって、安心してはいけません。独立した宣伝部のような部署があるような場合は、クライアント側にも校正のプロがいると思っていいでしょう。ただ、そのようなクライアントはごく僅かですから、チェックを行うクライアントは校正に関しては素人ということになります。「OK」が出ても気を抜いてはいけません。気を抜くと悲劇が起こります。
 
 しかも多くの場合、それは致命的なものとなります。例えば、価格が違っていたとか、問い合わせの電話番号が間違っていたとか…こんな時、「OKって言ったじゃないか」ってクライアントに責任のひとつ(いや、全部ですね)も押しつけたくなるのですが、よくよく考えると制作側が悪いわけです。そんなわけで、特に広告の仕事では相手の校正能力を見極めるというのも、非常に重要な課題となるわけです。

 さて、校正達成率という言葉があります。つまり、間違いをどこまで正しているかを表す数字です。100%という数字が出て当然のようですが、少なくとも出版物の場合は100%達成は非常に難しいということを残念ながら認めなければなりません。ニュースで俎上に上がった教科書、そして時刻表、地図、辞書などは100%が求められるものです。それでも間違いはあります。商業書、それも趣味書だと95%ぐらいでしょうか。そうそう、このブログの場合は、書いた直後に一回、管理ページにコピーした時に一回、アップした時に実際の画面上で一回。計3回の校正をします。ここで、見つけられなかったものはそれで良しとする、そういう形をとっています。ブログでそれ以上の手間を掛けられないというのが正直のところです。出版にしろ広告にしろ、実際の校正も誰がどの状態で何回読むか、それがワークフローで決められているのが普通です。ここで限りあるとはいえ、どれだけの人手と時間がかけられるかで校正達成率が決まるといってもいいでしょう。それでもミスは残るのです。悲しい現実です。
 
 もちろん、Webの仕事だって校正作業はあります。当然です。その一方で、校正達成率0%というサイトにもよくお目にかかります。校正作業をしたことのあるプロならば、校正をどれだけきちんとやっているかは、ちょっと見ただけですぐにわかってしまいます。0%とはつまり、まともな校正が行われた形跡がまったくないサイトです。個人のブログや趣味のサイト、これは仕方がないことでしょう。書き終えた後、一回も読み返されずにアップされている文章なんて、ホントにゴマンとあります。ところが、厄介なのは明らかにWebデザインのプロが作ったサイトです。クライアント側にも制作側にも校正のプロがいない、それが見え見えのサイトが結構あるのです。そして、こうしたサイトは、時として校正のプロからすると見るに耐えないものになってしまうと言わざるを得ません。これも悲しい現実です。