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ちょっとお遊び、HDRI

 High dynamic range imagingと呼ぶ写真の表現手法が、アーチスティックな作品を生み出すフォトグラファーの一部で流行っているそうです。日本ではHDRIとかHDRイメージングと呼ばれているようです。つい最近、このHDRIを知ったので、ちょっとここで書いてみることにしました。
 
 最近は、デジカメのダイナミックレンジも随分と広くなりました。それでも、銀塩よりはまだまだ狭いと言わざるを得ません。ダイナミックレンジの狭さを補う方法として、露出を変えて撮影した複数の写真のいいとこ取りをする方法があります。商品写真などでは、積極的に使われる方法です。例えば、腕時計。文字盤、ブレスレットそれぞれに露出を合わせたカットを撮っておき、それを合成するという方法です。これによって、完璧な商品イメージが作れます。つまり、写真の中にある被写体のすべてがちゃんと見える写真です。
 
 さて、一例をあげましょう。僕が撮った写真です。上の写真は、同じ場所で露出をずらしながら撮った写真です。左の写真は、空と電車そして高架橋に露出が合っています。下の影の部分は、完全に黒くつぶれています。中の写真は、歩道脇の生け垣やその奥の住宅が適正といっていいでしょう。で、右の写真は歩道の路面や左側の塀に露出が合っています。ちなみに、このカットは250万画素のコンパクトデジカメで撮ったものです。もともとダイナミックレンジが狭い古いカメラですから、一見して明暗の差は明白です。


 この三枚の写真からいいとこ取りをして仕上げた写真がこれです。カメラの角度と陽の向きからいえば、高架橋の上の電車が順光です。つまり、斜光というよりも半逆光です。宅地内の歩道は、左側から当たるべき陽が遮られています。ダイナミックレンジの狭さを補うために、こうした合成は日常茶飯事です。特に、僕のサイト神田川逍遙では、こうした合成はよく使います。もちろん、合成などせずにトーンカーブの調整などで済ますことができればいいのですが、被写体によっては合成は必須になってしまいます。なにしろ、明るい日差し、日陰になる橋の下なんて被写体が絶対に混在するわけですから。実は写真を良く知る人にとっては、この程度でも不自然な写真といっていいかも知れません。
 
 さて、HDRIです。ダイナミックレンジの広い写真、そういうことです。その意味では、誰もがやってきた露出違いのカットのいいとこ取りもHDRIです。つまり、広義のHDRIですね。ただ、HDRIとわざわざ断っている写真は、ちょっと違うようです。合成する時に、アーティスティックな効果を狙って、ハイキーな部分に粒状感を持たせたり、逆にローキーな所は高コントラストにしてみたり、ちょっと特殊な効果を持たせた「全てが見える写真」です。HDRIをうたっている写真を掲載しているサイトを見ると、合成された写真はシュールで空想的な感じを持たせているものが多いようです。もちろん、基本はいいとこ取りですから、サイズを大きくして色々な部分の詳細を見せるなんて手法もこれに加わります。なかなか、おもしろい試みだと思って、僕も一枚作ってみました。ただ、こうした表現のために撮影したものではないので、ちょっとやりすぎ感はありますが。

 まず、空に露出が合っているカットで空を作ります。軽くノイズを入れてHSB調整で青を強調した後、逆光で色が変わっている部分を強調しました。電車は、あえてハイキーなカットを使います。これは、シャッタースピードが遅くなっているので、より鮮明に使えると思ったからです。歩道脇の生け垣は、スポンジツールで彩度を立たせた後、強めのシャープをかけています。歩道そのものは、明るく写ったカットの日向部分の彩度を落としてから、タイルのエッジが際だつようにしてみました。ついでに、歩道の入り口近くにいた母娘を消してしまいました。
 
 写真が小さいので、細部まではここでははっきり見えませんが、オリジナルは驚くほど詳細でへんてこりんな写真になっています。こういう写真を作ることを目的にして、撮影した場合は結構遊べちゃうな、というのが試してみた感想でした。でも、一体何のためにこれをやるんだ、なんて聞かれたらちょっと答えに窮します。今まで、僕がやったことがない「作品としての写真」ということになるわけです。これからもやるかどうかはわかりません。ただ、ちょっと遊んでみたかった、それだけのことかも知れません。で、悪ふざけついでに今度QTVRでも作ってみます。